株式会社CannaTech 代表取締役
日本カンナビノイド関連団体連盟 代表理事
一般社団法人全国大麻商工業協議会 代表理事 

須藤晃通


2026年、CBDアドベントカレンダー企画に参加中です。

はじめに

2026年6月1日。この日を境に、日本のCBD業界は明確に「別の局面」へ入る。

CBNが指定薬物に指定される。業界に流通していた主力SKUの相当数が、一夜にして違法になる。ショップの棚から商品が消え、事業者の資金繰りが揺らぎ、ユーザーの手から選択肢が奪われる。その現実は、もうすぐそこにある。

この状況を「災害」と呼ぶ人がいる。「業界の終わりの始まり」と語る人もいる。気持ちはわかる。自分たちが積み上げてきたものが、ひとつの行政決定によって変質していく痛みは、当事者でなければわからないものだ。

だが私は、この局面を別の言葉で呼んでいる。

CBD 2.0の終焉であり、CBD 3.0の始まりだ。

この「CBD 3.0」という言葉は、3月に六本木で開催された業界横断サミットで、私から提起させていただいた。あの日は概念の輪郭を共有するにとどまった。
CBN規制施行を目前に控えた今、この言葉が何を意味しているのか、そして日本のCBD産業がこれからどこへ向かうべきなのか、その全体像を初めて文字にしてお届けしたい。

私がこれを書く理由

私は一企業であるCannaTechの代表であり、同時に日本カンナビノイド関連団体連盟(以下、JCF) 、一般社団法人全国大麻商工業協議会(以下、全麻協)の代表理事を務めている。この1年半、業界団体としての活動を通じて、大きな学びを得てきた。

厚生労働省監視指導麻薬対策課、麻薬取締部、国会議員、政府関係者、弁護士、大学教授。

業界団体という立場だからこそ会える相手、聞ける言葉、出せる書面があった。個社の営業活動では決して触れられない、規制のフロントラインに流れる空気の温度を、この肌で感じ続けてきた。

この1年半、私たちは自社の利益のためだけではなく、業界の未来のために多くの時間を費やしてきた。問題を提起し、解決案を模索し、時に熱い議論を交わし、同志とともに行動を起こしてきた。

時間をかけたからこそ見えたもの、時間をかけなければ見えなかったものがある。

私はこの業界の発展を心から願う一人であり、同時に、この業界の未来を憂いている一人でもある。

いつかの未来から、この「2026年4月」を振り返ったとき。
もし日本のCBD市場がそこに残っているとすれば、この業界はこのターニングポイントでどう変化したのか。
何を手放し、何を守り、何を新しく手に入れたのか。

私はその問いの答えを、今から書き始めようとしている。

これは業界への提言ではない。同じ道を歩もうとする事業者、同じ景色を見ようとするパートナーに向けた、私なりの設計図である。


第1章:なぜ今「世代論」が必要なのか

業界の混乱の正体を、私はこう見ている。

1.0の成功体験と、2.0の戦い方を、3.0の市場に持ち込もうとしているから、事業が壊れていく。

CBN規制に対する議論の多くが、「規制に反対する」か「規制の範囲で何ができるか」の二択に収まっている。しかしこのどちらも、2.0のフレームの中での問いでしかない。「今まで売れていたものを、これからどう売り続けるか」という問いだ。

本当に問うべきは、「3.0の市場で勝つために、自社の事業モデルをどう再設計するか」である。この問いを立てた瞬間、規制は敵ではなくなる。規制は市場の前提条件にすぎず、事業設計の変数の一つに過ぎなくなる。

以降、私がCBD 1.0・2.0・3.0と呼んでいる時代区分を順を追って説明していく。
これは歴史記述ではない。これからの事業判断に使える地図として書いている。


第2章:CBD 1.0(2018頃〜2024.12)ブロードスペクトラムCBDの世代

日本のCBD市場が本格的に立ち上がったのは、2018年頃からだ。海外で先行していたCBDオイルやリキッドが国内に持ち込まれ、一部の先進的なユーザーとショップによって静かに広がり始めた。

この世代の主役は、ブロードスペクトラムCBDである。ブロードスペクトラムとは、THC(テトラヒドロカンナビノール)を除去しつつ、CBG・CBN・CBC・CBDV・THCVなどのマイナーカンナビノイドを微量含んだ原料のことを指す。いわゆるアイソレート(CBD単体)ではなく、植物由来の多様なカンナビノイドが共存することで得られるアントラージュ効果が、当時の事業者とユーザーに支持されていた。

競争軸は、情報の非対称性だった。「CBDとは何か」を知っている者、海外のサプライヤーと直接つながれる者、輸入通関の壁を越えられる者が、ほぼ自動的に勝者になった。製品の中身よりも、それを仕入れて売れる立場にあることそのものが価値だった時代である。

ただし、ここで一つ重要な事実を記しておかなければならない。
1.0の時代、業界は大きく二つのプレイヤー群に分かれていた。
ひとつは、ブロードスペクトラムCBDを主軸に据えた事業者群。
もうひとつは、新規合成カンナビノイドを主軸に据えた事業者群である。前者は植物由来の成分と向き合い、後者はHHCやTHCH、THCV、THCB、HHCH、HHCPといった、化学合成・半合成によって生み出される精神活性系の新規成分を中心に事業を組み立てていた。

この二つは、業界内部から見れば全く異なる立脚点に立っていた。
原料の素性も、ユーザー層も、訴求軸も、事業ロジックも違う。
しかし、傍から見れば、どちらも「CBD系の大麻由来商材を扱う業界」として一括りに映っていた
規制当局からも、メディアからも、一般消費者からも、両者の違いはほとんど認識されていなかった。

これが、のちに業界全体が支払うことになるコストの根源である。

合成カンナビノイド側で起きた事案。HHC規制(2022年3月)を皮切りに、2023年以降のTHCH、THCB、HHCH、HHCPの指定薬物化連鎖は、そのまま「CBD業界全体の信用問題」として処理されていった。ブロードスペクトラムCBDを誠実に扱っていた事業者も、外部から見れば同じ穴のムジナとして扱われた。
業界の内側で何が起きているかを、業界の外に伝える言葉を、私たちは持っていなかった。

一方で、1.0の主流を成していたブロードスペクトラム原料そのものも、制度的には整わないまま動いていた。
THC残留に関する検査方法も閾値も確立されておらず、実務上は「検出されない」ことをもって適法性を担保する、という運用が一般的だった
検出限界も、検査手法も、許容される残留レベルも、制度的に確定していない。この曖昧さの中で、事業者はそれぞれの解釈で輸入と販売を続けるほかなく、事業者ごとに判断が分かれ得るグレーゾーン構造が市場を支えていた。

プレイヤーの急増による価格競争も相まって、「輸入できる」だけでは差別化が成立しなくなる。1.0の終わりは、2.0の号砲だった。


第3章:CBD 2.0(2025〜2026.6) アイソレートとブランドの世代

1.0が「輸入できる者が勝つ」時代だったとすれば、2.0は「選ばれる者が勝つ」時代だった。そして、2.0の始まりを告げた出来事は、この業界にとって歴史的な転換点となった。

2024年12月、大麻取締法が75年ぶりに改正されたのである。

一見、この法改正は業界にとっての「追い風」として受け止められた。大麻由来医薬品の承認への道が開かれ、大麻草の部位規制から成分規制への転換が進むなど、規制の近代化が一気に動いた。だが、現場で事業を動かしている側から見れば、これは規制緩和ではなく、規制の質的転換だった。

最大のポイントは、THC残留に関する厳格な基準値の設定である。1.0の時代に実務上成立していた「検出されなければよい」という運用は、この改正によって成立しなくなった。新基準のもとでは、ブロードスペクトラムCBD原料の多くが、そのままでは使えなくなる。1.0の屋台骨そのものが、制度によって退場を迫られたと言ってよい。

ここで、業界は動揺し、同時に分岐した。

1.0でブロードスペクトラムCBDと誠実に向き合ってきた事業者は、新基準に対応するために舵を切る。より精製度の高いアイソレート(CBD単体)を軸に、CBGやCBNやCBCといった複数のマイナーカンナビノイドを個別に配合することで、疑似的にブロードスペクトラムを再現する方向。あるいは、特定のマイナーカンナビノイド一つに照準を絞り、機能訴求を明確化する方向。
いずれにせよ、1.0の「大麻草に含まれる成分そのものを活かす」発想から離れることはなかった。形は変わっても、植物由来の成分と向き合う姿勢は引き継がれていた。

一方、新規合成カンナビノイド側の事業者たちは、別の道を探すことになった。HHC、THCH、THCB、HHCH、HHCPと続いた指定薬物化の連鎖によって、彼らが依拠してきた成分はほぼ出尽くしていた。新たに開発される成分は、規制の包括指定を避けるために化学構造式がカンナビノイドから徐々に離れていき、もはや何を「大麻関連商材」と呼んでいるのか、業界内部でも判然としない状態になった。新規合成カンナビノイドの市場は、外形的にはシュリンクしていくように見えた。

ここで、二つの潮流が、一つの原料に合流する。それがCBNである。

CBNは、植物由来のマイナーカンナビノイドであり、かつ穏やかな鎮静作用を持ち、QOL向上の実感力にに長け、訴求しやすい。ブロードスペクトラム派にとっては「単一成分として立てられる天然カンナビノイド」であり、合成カンナビノイド派にとっては「規制を免れつつ体感訴求のできる次の主役」だった。

両者の戦略上の利害が、奇跡的な一点で交差した。

2.0は、CBNを中心に急成長した。リラックス、メンタルヘルス領域を中核に、CBNを主成分とするクッキー、リキッド、グミ、カートリッジ、オイルが市場を席巻する。D2Cブランドが次々と立ち上がり、洗練されたパッケージデザイン、ブランディングが整った。
ただし、この業界特有の制約として、Meta、Google、Yahooといった主要プラットフォームでの広告出稿は原則として封じられている。そのため2.0のマーケティングは、インフルエンサー、リファラル、SEOを主軸に組み立てられた。限られたチャネルの中で、いかにブランド想起を獲得し、どのメディアに露出し、どのインフルエンサーと組むかが勝敗を分けた。

しかし、急成長の裏で、競争は熾烈を極めていった。差別化の軸を見失った事業者たちが選んだのは、やみくもに含有量を増やす競争だった。1食あたり1000mgのCBNを配合したクッキーが市場に流通するようになった。法解釈上は問題がなかったかもしれない。しかし、ビジネスの倫理観としては、到底受け入れがたい光景だった。

業界内部でも、この状況への危機感は広がっていた。
2025年6月頃、全麻協を含む8団体がCBN問題について共通の懸念を示し、業界横断での自主的な対応を協議していく方針を打ち出した
その後、この8団体は日本カンナビノイド関連団体連盟(JCF)として連盟を正式発足させ、CBN高含有問題、パッケージへの記載必須事項、安全な摂取量の指針など、業界としての自主制度の構築に本格的に着手していった。

しかし、時すでに遅しだった。
行政や消費者からは一緒くたに同一業界として見られていることに変わりはなかった。

2025年5月、高含有のCBNクッキーを摂取した男子大学生が負傷する事故が発生していた。この事故は6月に報道され、社会的な関心は一気に高まった。「合法ドラッグ」という言葉とともに、CBN業界全体への視線は一変した。

2025年10月、厚生労働省の指定薬物部会でCBNの指定薬物化が答申された。そして2026年3月に省令が公布され、2026年6月1日、CBNは指定薬物として規制される予定だ。2.0の屋台骨が折れる瞬間である。

2.0は、1.0と比べて明らかに洗練されていた。厳格化した制度、素性のより見える原料、精神活性作用を持たない成分、制約の中で組み立てられた現代的なマーケティング手法。業界は「合法性」と「売れる仕組み」の両立に、ようやくたどり着いたように見えた。だが、自主的な規律を、市場のスピードが追い越していった

2.0は「売り方の競争」だった。しかし、売れるものが売れなくなる局面で、このゲームは破綻する構造だった。そしてその破綻は、外圧ではなく、業界自身が招いた結果でもあった。


第4章:CBD 3.0とは何か?私の定義

2.0の終焉は、単なる事業環境の変化ではない。
業界そのものの思想の転換点である。ここから先の時代を、私は「CBD 3.0」と呼んでいる。

CBD 3.0とは何か。販売事業者の目線から、私は次の三つの軸で定義する。

第一の軸:処方設計力

3.0の事業者は、カンナビノイドの含有量で勝負するべきではない
勝負するのは、顧客が抱える具体的な課題を、どれだけ的確に解決できるかである。

こうした顧客起点の課題に対して、どのカンナビノイドを、どの配合比で、どのような処方と剤型で訴求するか。この設計の総体が、3.0の競争軸である。

「1000mg配合」ではなく、「このお悩みにはこの処方、この剤型、この摂取タイミング」で選ばれる時代へ。
1.0は「原料を輸入する力」、2.0は「ブランドで選ばれる力」で勝負した。
3.0は、顧客の課題から逆算した処方設計で勝負する時代である。市場形成への原点回帰だ。

第二の軸:価値観の変容促進力

3.0の事業者に問われる二つ目の能力は、社会の前提概念そのものを動かす力である。

日本において「大麻」という言葉は、いまだ極めて重い文脈を背負っている。犯罪、中毒、反社会性。これらのイメージは、メディアでも、教育現場でも、家庭の食卓でも、数十年にわたって繰り返し強化されてきた。
CBD、CBG、CBN、THCなどカンナビノイドの名を冠した製品は、どれほど科学的に安全性が担保されていようとも、その言葉の影から自由にはなれていない。

この構造は、個別の事業者のブランド努力だけでは変えられない。
「大麻」という言葉に対する前提概念そのもののパラダイムシフトが、業界全体に必須の課題である。

大麻草が麻として1300年以上日本の文化と共にあった歴史、ヘンプという素材が繊維・建材・食品・化粧品として世界中で活用されている現実、カンナビノイドが人体のエンドカンナビノイドシステムと対話する内在的な成分である事実。
こうした文化的・科学的・産業的な文脈を、社会に対して丁寧に、そして粘り強く届け続ける力。3.0の事業者は、自社の製品を売ると同時に、業界の言葉の土台を作り直す側に回ることを避けられない。

価値観の変容なしに、3.0の市場は拡張しない。
これは理念の話ではなく、極めて実務的な市場設計の話である。

第三の軸:制度対応力

3.0の事業者は、規制を「後追い」しない。規制に「先回り」する

業界の自主基準を作る側に回る。協会や連盟に主体的に参画し、行政との対話の窓口を業界として持つ。パブリックコメントに事業者として意見を出す。

そしてもう一つ、販売事業者の目線で極めて重要な論点がある。
大企業の参入を、業界として歓迎し、呼び込むことだ。

今の日本のCBD市場は、規模の小さなD2Cブランドの集合体に近い構造を持っている。この構造は、機動力という点では強みだが、社会的認知の改善、製品安全性への信頼、流通チャネルの拡張という観点では、決定的に弱い。
大手食品メーカー、大手ドラッグストアチェーン、大手製薬企業。こうした既存の信頼インフラを持つプレイヤーが参入してくることで、業界全体の認知層は一段階引き上がる

3.0の制度対応力とは、規制への対応だけではない。業界をオープンにし、大企業が安心して参入できる制度環境を、業界側から整えていく力でもある。

2.0までの業界は、規制を「外からやってくる災害」として扱ってきた。
3.0では、規制も、新規参入も、事業設計の内側に組み込まれた変数になる。

市場側で起きていること

3.0の定義を、市場側から言い換えればこうなる。

ユーザーは、もはや「CBDだから買う」のではない。
「自分の課題を解決してくれるから買う」のである。
カンナビノイドは、商品のラベルに書かれた華やかなキーワードではなく、課題解決のための機能性素材の一つとして、他の成分と並列に評価される存在になる。

市場は、カテゴリで動くのではなく、機能で動く。睡眠、不安、痛み、肌、腸内、ペット、獣医領域。こうした機能軸で、カンナビノイドは再配置されていく。「CBD業界」という括りそのものが、3.0では意味を失っていく可能性がある。


第5章:3.0の時代に、私たちが最初にやるべきこと

CBD 3.0の地図を眺めたとき、個社の戦略を練る前に、業界全体としてまずやるべきことがひとつある。

業界が一丸となることだ。

3.0の時代にこの業界でビジネスを続けていくつもりなら、この一点だけは、どのプレイヤーにも避けて通れない論点になる。なぜか。
それは、規制を「コスト」として見る企業は、「資産」として見る企業に必ず敗けるからである。

自主基準の策定。業界団体への参画。行政との対話。パブリックコメントへの意見提出。これらを「面倒なコスト」として避けてきた企業は、制度設計の外側に立ったまま、自分たちに不利な制度が次々と決まっていくのを、ただ眺めることになる。発言する機会を放棄した者には、発言の痕跡も、交渉の余地も残らない。

一方で、制度の内側に立った企業は、自分たちにとって事業運営可能な制度環境を、自らの手で整えていく。業界の自主基準を作る側に回り、規制当局との対話の席に着き、自分たちの事業の前提を、自分たちの言葉で主張していく。

この差は、3.0の時代を通じて、指数関数的に広がっていく。

2.0の時代は、個社の広告運用の巧拙、ブランドへのエンゲージメント、コスパで勝負が決まっていた。3.0の時代は、業界として制度とどう向き合うかで、一社一社の事業の寿命が決まる
個別のブランドがどれだけ洗練されていても、業界全体の制度環境が崩れていけば、どのプレイヤーも長くは生き残れない。

だからこそ、一丸となるべきだ。競合同士でもいい。立ち位置が違ってもいい。
「この業界を続ける」という一点だけを共有する仲間として、制度の内側に一緒に立ってほしい

それが、3.0の時代を生き抜くための、最初の、そして最も重要な準備である。


第6章:CBN規制は3.0への扉である

最後に、CBN規制そのものについて、私自身の見方を残しておきたい。

2026年6月1日のCBN指定薬物化を、「業界を潰す災害」として語る声は、いまも根強い。気持ちはわかる。
私自身も、当事者の一人として、この規制が多くの事業者とユーザーに与えるダメージの重さを、痛いほど理解している。

だが、3.0の地平からこの規制を見返したとき、これは災害ではなく、扉なのだと、私は思っている。

CBN規制は、2.0の終わりを加速させる
単一成分の含有量競争、ブランドとチャネルの争奪戦、供給過多、規制されていない成分への連鎖的な乗り換え。
こうした2.0特有のゲームが、この規制によって明確に終わる。
ゲームが終わるからこそ、事業者は次のゲームに進むことができる。

同時に、CBN規制は、3.0の参入障壁を作る。
規制という外圧を前に、「売り方の競争」で生きてきた事業者は消え、マーケットインの発想で顧客課題に向き合い、同時に業界のブレイクスルーを担う事業者だけが残る。これから参入しようとする新規プレイヤーにも、同じ姿勢が最初から求められる。業界の質は、規制によって選別され、底上げされる

2.0までの業界は、プロダクトアウトだった。売れる成分を見つけ、訴求を組み立て、ブランドで差をつける。この発想で拡大してきた市場が、今、構造的に行き詰まっている。3.0は、その逆方向への転換を求めている。
顧客が抱える課題から逆算して製品を設計するマーケットイン、そして「大麻」という言葉の前提を社会ごと動かすブレイクスルー。この二つなしに、3.0の市場は開かない。

そして、3.0の時代に事業を続ける企業には、もう一つ、避けて通れない論点がある。レピュテーションリスクと品質管理である。

社会の前提概念を動かそうとする以上、事業者一社の不祥事は、業界全体の信用を一気に後退させる。製品の品質管理能力は、これまで以上に徹底して問われる
原料選定、製造工程、保管、流通、販売。この全工程で、第三者に説明可能な品質基準を持っているかどうかが、事業の継続可能性そのものを左右する。

とりわけ、CBN規制以降は、THC残留基準の遵守のみならず、CBNが非検出であることの担保も事業者の責任として加わる。分析技術や検査体制にはなお多くの課題があり、本稿では紙幅の都合で語りきれないが、この領域も3.0の事業者が正面から取り組むべき重要テーマである。

規制を敵と見なす限り、事業者は受け身のまま、次の規制に怯え続けることになる。
だが、規制を産業の成熟を促す触媒と捉え直したとき、事業者の立ち位置は一変する。
規制は、3.0の市場に入る資格を問う審査官であり、同時に、共に市場を設計する対話の相手になる。

CBN規制の先に、日本のCBD産業が残っているとすれば、それはこの規制を扉として潜り抜けた事業者たちの市場である。
私はそう信じているし、そこに至る道を、自分たちの足で歩いていきたい。


第7章:ココロとカラダが整えば、人生は冒険に変わる

ここまで、CBD 1.0から3.0への見取り図を、私なりの言葉で書き連ねてきた。

この記事は、業界への提言ではない。答えを提示したわけでもない。3.0の地平で何が起きるのか、最終的に決めていくのは、これからの数年間、この業界で事業を続ける一人ひとりの事業者であり、パートナーであり、そして何よりも、カンナビノイドを生活の一部として選び続けてくれるユーザーである。

私は一企業であるCannaTechの代表であり、同時に業界団体の代表理事でもある。その二つの立場から見える景色を、できるだけ率直に言葉にしたつもりだ。反論も、異論も、歓迎する。
むしろ、この言葉をきっかけに、業界の中で新しい議論が生まれることを、私は心から願っている。

いつか、未来のどこかの時点から、この2026年4月を振り返ったとき。

「あの時代、日本のCBD産業は、確かに一度淘汰され、そして新しく生まれ直した」と、私たちは言えるだろうか。「あの黎明期に、業界の中で、まともに議論を続けていた人たちがいた」と、次の世代に残せるだろうか。

私は、残したい。

成熟した世界経済において、規制され、閉ざされ続けてきた大麻産業は紛れもなく成長産業であろう。
今後の未来についても、ポジもネガも含めて、大麻産業には多くの変革が待ち構えていると容易に予測できる。
我が国では戦後75年間、触ることのできない時代が続いた。時代を変えることはできなくても、自分自身の決断を変えることはできる。人生を賭して取り組むべきテーマとしては申し分ないだろう。

CannaTechの理念に、「ココロとカラダが整えば、人生は冒険に変わる」という一節がある。
この言葉は、社内や製品を使ってくださるユーザーに向けて掲げているものだが、今、同じ言葉を業界の仲間たちに向けて差し出したい。

規制も、市場の激変も、業界の分断も、不安も、すべて受け止めた上で、

それでも、ココロとカラダを整えて、この冒険を続けていこう

同じ景色を見たい事業者がいるなら、新しい時代の幕開けをぜひ、一緒に歩いてほしい。


須藤晃通
株式会社CannaTech 代表取締役
日本カンナビノイド関連団体連盟 代表理事
一般社団法人全国大麻商工業協議会 代表理事